オトガイ神経麻痺における下唇の変形について(すこし専門的な内容となります)

オトガイ神経麻痺(下歯槽神経麻痺)になると、オトガイ部の知覚神経が麻痺(鈍麻)することで、センサーを失った下唇下制筋や口角下制筋などが動作困難となり、ひどくなると短縮・拘縮を起こします。

結果として見た目に、下部赤唇が切り上がったように斜めになり、「唇の形が変わってしまった」という状態になります。運動神経が損傷したわけではないので動作は可能ななずですが、知覚というセンサーが無いために、通常範囲での動作が確保できず8割くらいの尺でしか使われないために起こると考えられます(ブロック注射後すぐに切り上がりがでる場合は、単純に下制方向への力がなくなるため)。

下唇の切り上がり

 

同じようなケースで、手術後に顔面神経の下顎縁枝の損傷があったような場合にも、同様の下唇切り上がりが見られます。
下唇の下制制限は下顎縁枝だけでなく、頬筋枝の障害でも起こります。こちらは口輪筋や口角下制筋が頬筋枝と下顎縁枝の両方に支配されているためです。また、頸枝支配の広頚筋の麻痺でも同じように症状がでます。

オトガイ筋においては下顎縁枝のみの支配となるので、こちらの部分の麻痺の有無で、どの神経が原因となっているかの判断基準とすることもできます。

いずれにせよ、神経損傷でない場合の下唇切り上がりについては、早期からのリハビリで動作回復が可能となります。

また筋短縮や拘縮が進むと、こわばり感などが強くなるので、ストレッチや温熱療法、マッサージや鍼灸治療を用いて治療にあたっています。