下歯槽神経(オトガイ神経麻痺)
下歯槽神経麻痺(かしそうしんけいまひ)は、歯科治療や下顎の外科手術、美容整形などによる骨切りを行った際に偶然起きてしまう麻痺症状です。
下唇や下顎の皮膚、口腔内粘膜や歯茎に知覚異常を引き起こすものです。
知覚異常とは知覚の低下や鈍麻、過敏などのことで、触ってもわかりずらかったり、逆に少しの刺激でも強く感じたりします。
また、それに伴って二次的に会話や食事が不便になることがあります。本来動作は運動神経である顔面神経が支配していますが、下歯槽神経麻痺によって感覚が失われることで、センサーがなくなるため動かしづらくなるのです。
見た目には変化がないので他人にはわかりませんが、自覚的な不快感が強く、ストレスがとても大きくなります。
下歯槽神経麻痺の原因
- 親知らずの抜歯後
- インプラント治療をした後
- 下顎の美容整形手術をした場合
- 下歯の神経の手術後
- 良性腫瘍摘出などをした場合
- 歯周病の治療後
- 下顎を後ろにひっこめる手術した場合
- 顎変形症の手術後
- その他
「麻痺がいつまでたっても治らない…」
「治るまでに何をすればいいの…?」との不安を訴えられる患者様が多いです。
下歯槽神経麻痺の症状
- 知覚の鈍麻(触ってもわかりずらく、唇やオトガイ部の感覚が鈍い)
- ジンジンするような感じ(痺れたような感じがする)
- ずっとビリビリしている
- 痛みが出る(過敏なども含む)
- 下顎部分の硬さ(こわばり感)
- 唇の動作がうまくいかない(特に下唇部分)
- 会話しずらい
- 舌がしびれる(舌神経麻痺による)
- 熱いものや、冷たいものを飲むと過敏になる
*神経損傷の程度によって症状は異なります
当院での鍼灸治療
下歯槽神経麻痺に対しての治療は、発症後3か月以内に始めるのがベストです(外科手術後で腫れがある場合は、腫れがひいてから)。
通常は半年から1年以内の治療で回復するのですが、それ以上の期間が経ってしまった場合は、完全な麻痺以前の状態へ戻る方が少ない印象です。しかしながら治療を行うことで状態改善は可能です。
下歯槽神経麻痺の場合、運動神経ではないので知覚の低下や鈍麻、過敏といった知覚異常が治療対象となるのですが、知覚異常があることによって口周辺の動作が上手くできなくなる方が多くいます。
本来なら知覚を頼りに動作を行いますが、その目安になる知覚がなくなってしまうので、しゃべったり水を飲んだりといった日常動作が上手くいかなくなるのです。
また、「動作が上手くいかない」ということは筋肉がきちんと使われていないということです。そのため、麻痺が長引いている患者様の表情筋が、短縮を起こしてしまい、表情が歪んだり浮腫んでしまうといった、2次的な症状を作ってしまうのです。
特に「う」や「い」といった形を作るのが困難で、下唇下制筋や口角下制筋などの短縮で、下唇が切り上がったような形に変形してしまいます。
当院は、もともと顔面神経麻痺なども専門に行っている治療院なので、知覚的な症状と運動的な症状、どちらに対しても有効な治療を行うことができます。感覚を戻すための神経の再教育と、自宅にて取り組んでもらうリハビリも指導いたしますので、安心してご来院ください。
治療期間は、<神経損傷の程度>や<発症からの期間>にもよりますが、週1~2回で3か月を目安にしていただいています。
積極的なケアが大事!
下歯槽神経麻痺(オトガイ神経麻痺)の治療は、他人任せではうまくいきません。
鍼灸治療の合間に、いかに自分から進んでリハビリに取り組むかで結果が異なるからです。身体は毎日変化しています。その変化を捉え、感覚や意識を治療箇所に持っていく。その繰り返しが神経再生を押し上げていくのです。
麻痺は放っておいては治りません。
きちんとした治療とリハビリがとても大切です。
2次的な症状を防ぐためにも、早めの治療を行ってください。
受け身でない積極的なケアを行っていきましょう。